「湿疹に効く漢方はないですか?」
と患者さんから聞かれた。
ふつうの皮膚科さんは、にきびやいぼには漢方を出すことは多いが、アトピーなど湿疹には漢方を出すことは少ない。
漢方の成分自体にもアレルギーを起こすものもあるし、あまり余計なものを飲ませたくないという気持ちがあるのかもしれない。
一方、漢方に凝っている先生だと、湿疹にも漢方を処方することがある。
漢方の考え方は大まかにいうと、
「余分なものを出し、足りないものを補う」
という感じ。
「余分なものは出し、足りないものを補う。バランスをとるのが漢方薬」
- 熱をもっている(紅斑、丘疹、小水泡、膿疱、結痂)→清熱剤
- 水がたまっている(小水泡、湿潤)→利水剤
- 乾燥(結痂、落屑)→慈潤剤
- かゆみ→祛風剤(「風」は「かゆみ」の意味)
漢方は先生の考え方によって様々な処方がされる。一般的には添付文書に書かれている病態に合わせて処方されるが、詳しい先生だと、患者さんそれぞれの体質を重視してさまざまな漢方が処方されることもある。
湿疹によく使われる漢方薬はいくつかあるが、使い方、組み合わせ方が先生によってけっこう違ったりする。
複雑〜。
そんなふうに使い方はこれ、という定番はないのだが、一例として
全部に効く生薬が入っている消風散を基本に、症状に合わせて他の漢方を足していく、という方法がある。
この使い方はわかりやすい!
消風散(ツムラ22)の成分
- 熱を取り炎症を鎮める‥苦参、石膏、知母、地黄
- 水分過剰を調整する‥・木通、蒼朮
- 潤す‥当帰、胡麻
- かゆみをやわらげる‥荊芥、防風、牛蒡子、蟬退
潤すのと乾燥させるのと両方入っているけど、漢方は「乾いている人には潤し、過剰の人からは水分を取り去る」という調整機能がある、とのことだ。
蝉退はせみのぬけがら!
消風散に足す漢方(1種類選ぶ)
- 発赤、充血が強い‥黄連解毒湯(15)、白虎加人参湯(34)
- 水泡、びらん、浮腫、滲出が強い‥越婢加朮湯(28)、麻杏甘石湯(55)
- 鱗屑、亀裂、乾燥が強い‥四物湯(71)など
- 慢性化し暗赤色‥温清飲(106)など
- 肥厚、苔癬化が強い‥桂枝茯苓丸(25)、桃核承気湯(61)、大黄牡丹皮湯(33)、通導散(105)など
- 膿疱、化膿傾向‥排膿散及湯(122)(ひどいときは漢方ではなく抗生物質を使う!)
小林裕美:皮膚科サブスペシャリティーシリーズ「1冊でわかる最新皮膚科治療」より抜粋、一部改変
ツムラのエキス剤だとどうしても、石膏だけ増やす、とかができず、重なってしまって多すぎになる生薬もでてきてしまうため、なかなか処方が難しいようだ。
ツムラ2種類を2:1でまぜて、なんて処方がでることもある。すぐ受け取って帰るつもりだった患者さんはイライラしてる〜。
一方、消風散は中心にすえず、じゅくじゅくした湿疹(湿潤)に使うという先生もいる。
その他、
- 当帰飲子(86)
- 茵蔯五苓散(119)
- 十味敗毒湯(6)
- 治頭瘡一方(59)
なども湿疹に使われることがある。
これと決まった正解はない。一人一人に合わせた処方といったところかな?
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