Cr,Scr,CCr,GFR,
eGFR、cys-c‥
腎臓の糸球体での濾過機能がどれくらいの値か(GFR)、ということを知りたい場合、
直接取り出して測ることができないので、色々な方法が考えられてきた。
腎クリアランスとは
血液中に取り込まれた物質が、血漿から尿中にどれくらいの割合で排泄されたか、ということ。
腎糸球体の濾過機能を測る手がかりになる。
しかし、体内に入った物質は代謝されたりタンパクと結合したりして、静脈中の濃度と糸球体に入る直前の濃度は一致しない。糸球体で濾過された後も尿細管でその物質が再吸収されたり分泌されたりして、最終的な尿中の濃度と濾過直後の濃度は一致しない‥。
GFR(糸球体濾過量:glomerular filtration rate)
そこで検査の標準物質となったのがイヌリン!
血漿蛋白とも結合せず、全量が糸球体で濾過され(通過する)うえ、尿細管から再吸収も分泌もされないという理想的な物質!
C=GFRになる!
ただしこの検査は、イヌリンを点滴して飲水採血採尿を30分ごとに2時間半繰り返すという面倒くさい検査で、気軽に行うことができない。
もうちょっと楽に検査できないものか‥。
eGFR(推定糸球体濾過量)-補正値と未補正値
というわけで目をつけられたのが、筋肉でつくられるクレアチニンという物質。腎臓から速やかに排出され、再吸収もほとんどないため(分泌は多少ある)、この物質の血中濃度を利用して、糸球体濾過量を推理する式が考え出された。
Cr=Scr=血中クレアチニン濃度!
(mg/dl)
この検査値さえあれば計算できる!
1.73m2 というのは標準体型(170cm,63kgくらい)に補正した値。
どんな体型の人でも、正しく腎機能評価をするために補正がかけられている。
CKD(慢性腎臓病)評価をする時の値はこちらを使う。
華奢な人はもともとの筋肉量も少ないので、補正をかけないと腎機能が正常でも低い値がでてしまうのだ!
一方で、実際に薬剤を投与する時は補正値を使うと華奢な人には多過ぎてしまうことがあるので、体型にあったeGFR値を知る必要がある。どれくらいの薬剤量が適切か考えるのに使うのは未補正値の方。
こんな計算、仕事中にできっか!
(よく考えたなー)
というわけで、計算してくれる便利なサイトもいろいろある。ありがとう〜。
Ccr(クレアチンクリアランス)
添付文書を見ると腎機能の値はGFRよりCcrで記載していることが多い。
Scrの検査法は海外ではJaffe法、日本では酵素法が使われていることが多い。
真の値に近いのは酵素法の方でJaffe法は20〜30%低い値になる。
統一すればいいのに〜。ややこしいわ!
Ccrを実測する検査も面倒くさいので、推定CCrを用いて薬物の投与設計が行われるのが一般的。
通常の血液検査で測れるScrがわかれば計算できる。
肥満患者は体重の割に筋肉量が少ないから。
eGFRとCcrの関係
クレアチニンは尿細管でも分泌されるため、CcrはGFRより20〜30%高い値になる。
一方でJeffe法でCcrを測定した場合、本当の値より20〜30%低い値がでるので、
結果的にはCcr≒GFR
臨床の場で薬剤の減量を考える時は、推定Ccr≒eGFRとして、だいたいの目安量を計算する。
Cys-C(シスタチンC)
クレアチニンはいい線いってるけど、筋肉量に左右されるので常に性差や年齢差、体格を考えなければならないし、濾過後にも分泌されるので、正確な量ではない。
糸球体濾過量を測るのに、クレアチニンよりも優れた物質はないものか‥。
ということで、次に登場したのがシスタチンC!
全身の細胞から分泌されるタンパク質なので、体格の影響を受けにくい上、濾過後の分泌も再吸収もないという優れモノ。より正確にGFRを推定できると考えられる。
しかし、シスタチンCにも欠点がある。末期腎不全(ESKED)になると血清シスタチンの増加が頭打ちになり、腎機能を正確に評価できない。
一方クレアチニンの方は、軽度〜中程度の腎不全では増加してこないため、判別できない。
両方をうまく使い分けることが大切。
まとめ
- 補正されたeGFR(ml/min/1.73m2)は、慢性腎臓病の重症度の評価に使う。
- 未補正のeGFR(ml/min)とCcrは、薬剤投与量が適切かどうかの判断に使う。
- 血清クレアチニンは腎不全が中程度(GFR<40ml/min/1.73m2)にならないと上がってこない
→軽度低下では、クレアチニンを使ったeGFR,Ccrでは検出できない。 - シスタチンCは腎機能が軽度に低下(GFR<70ml/min/1.73m2)しても上がってくるため、早期の腎機能評価に適切。
- シスタチンCは末期では頭打ちになるため、使えない。
- 薬剤量が適切かどうかざっくり判断する時、eGFR≒推定Ccrと考えてよい。
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