疥癬治療薬ストロメクトール(イベルメクチン)について

ヒゼンダニ、というダニが人の皮膚に寄生しておこる疥癬という病気がある。

非常にかゆいそうだ。

ヒゼンダニは手首やてのひら、指の間、脇の下や足裏、足首などに、疥癬トンネルというのを掘っていき、その奥に卵を生みつける。疥癬トンネルは皮膚の浅いところから掘っているので、眼で直接みることができる。しかし、ちょっと皮が剥けたのかな、という程度にしかみえないので、経験のない若い先生は見逃しやすい、とベテランの先生が言っていた。

その話を聞いた時、自分の手のひらを見たら、疥癬トンネルっぽく皮が向けたところがあってぞぞぞっとした!(違ったけど)

通常疥癬ではダニが数十匹以下しかいない。赤いブツブツとかゆみというよくある症状。それに小さな疥癬トンネル。あまりない症例。若い先生が診断を間違えるのも無理もなかろう(偉そう)。しかし‥

普通の湿疹だと思って、ステロイドを塗ると悪化する!注意!!

疥癬の患者さんは、うちの薬局では1年に数人程度。(全くいない年もある。)

そのとき、飲み薬でつかわれるのがストロメクトール(イベルメクチン)だ。

飲む錠数は体重によって決まっている。

ストロメクトール(3mg)の用量

体重(kg)錠数
15-241
25-352
36-503
51-654
66-795
80以上200μg/kg

空腹時服用の薬(食後だと血中濃度があがりすぎてしまうことがあるので)。

ほとんどの患者さんは1回のみの服用で終わるが、まれに2回目の投与が行われることがある。

疥癬の患者さんは少ないが、皮膚科の近くの薬局なので、置いておかないわけにもいかない。

期限切れで破棄ということも多い。高い薬なのにー!(1錠652.6円(消費税別))

そのめったにでない薬が、急にコロナの治療薬候補として脚光をあびている。

なんで抗寄生虫薬がコロナの薬?

作用機序はよくわかっていないが、ウイルスが必要としているプロテアーゼの働きを阻害している、という可能性などが考えられている。既存の抗インフルエンザ薬(リレンザとかイナビル)と同じような仕組みでウイルスの侵入を防いでいる、ということらしい。

もともとは静岡県伊東市の土壌から発見された放線菌の発酵産物から単離されたアベルメクチンから作られた半合成抗寄生虫薬。発見者はノーベル賞受賞の大村先生。有効性には懐疑的な報告もあるが、少しでも効き目が認められるなら、とりあえず使ったほうがいいのかな、とも思う。普通の医薬品の中では高いほうだったけど、最近の生物学的製剤や他のコロナの薬に比べれば激安!

コロナの影響で需要が伸びたのか、最近、ストロメクトールは入荷しづらくなっている。

あんなにマイナーな薬だったのに‥。(疥癬以外には線虫駆除に使われている。)

最近の薬は高すぎるよー!

注射1本数十万円とか、錠剤1錠数万円とか!

(余談ですが!)

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